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活用実践事例集

2024/11/14

「音読の森」で豊かな音読体験を積み重ねる~5年版を例に

本書「音読の森」は古今の詩を選りすぐった音読の書である。ちょうど週1編+αで詩に親しめる数の詩が収録されている。
基本となる活用の王道は、朝の会や帰りの会などで、一週間程度一つの詩をみんなで揃って音読する。
これにつきる。作品のもつ力で十分に子どもの糧になるからだ。気に入った子は自然と暗誦するであろう。指導を工夫するのは、そういう土壌を作ったうえでのことである。
しかし、作品の中には、活用の工夫をする方がより楽しくなり、より力が付くものもある。
色々な活用の方法があるが、ここでは音読の活動を主体に3つの実践のヒントを紹介する。いずれも教員人生を通じて見出し、行ってきた方法である。

  • 永島 俊之元教諭

    元千葉県公立小学校初任者指導教員

実践のヒントその1 七五調を意識してみんなで音読しよう!

子どもが一斉音読する。
先生と皆さんの読み方はどこが違いますか?
教師が七五調で音読する。
「先生は調子をつけて読んでいる。」
ここですべての行が七音・五音でできていることを読みながら確かめる。
確かめているうちに、子どもは6行目が八音五音になっていることに気づく。そこですかさず問う。
6行目も七音・五音で読めるのです。どう読めばいいかな?
学校を「がっこ」と読むという考えが出てきたら、褒めまくる。
そうです。ここは「がっこ」と「う」を省略して読むとリズムが崩れないんですね。
こういう調子を「七五調」と言います。七五調は昔の日本の物語や詩でよく使われています。
子どもが一斉音読する。見違えるほど調子がよくなる。 
 
最後にこの「音読の森」にも七五調の詩が載っていることを告げて終わる。
 
○「山のあなた」40ページ…典型的な七五調
○「花」41ページ…同上
○「浜辺の歌」42ページ…部分的な七五調 各連後半は六音・六音
○「紅葉」43ページ…七音・七音が主体 各連の最後のみ七音・五音
○俳句・短歌を読もう 45~50ページ

実践のヒントその2 調べて音読しよう


作品との出会いの日に「はやくちことば」を一斉にそろえて音読してみる。
なかなかうまく揃わないことに気づく。
そもそも早口言葉は一人一人読む最速の速さは違うので揃えようとするとどうしても遅くなるか、人を置いていくことになりやすいことに気づかせる。
皆さんは、ほかにどんな早口言葉を知っていますか?
早口言葉を知っている子は得意そうに言うだろう。
 
そこで、次のように提案する。

1.一人一人さらにどんな早口言葉があるかを調べます。
2.その中から自分がやってみたい早口言葉を選んですらすらと言えるまで練習します。
3.自信がついたら、その成果をみんなの前で発表します。

 
次の日から朝の会の音読タイムを実施しているならば、その時間は、調べて、選んで、言えるようになった子の早口言葉の発表の場となる。発表後、他の子も各自で練習する時間を設ける。5年生であるならば、早口言葉を創作する子がいても楽しいだろう。
 
以上の活用例「調べて音読」は、早口言葉に限らない。例えば掲載されている「犬」の作者である金子みすずの他の詩を調べて、自分で音読してみて、それを紹介し、みんなで音読してみる、といった活用方法もあるだろう。この場合、「音読の森」は広く深い森の入り口でそのショーウインドウの役割を果たしているのである。
さらに、掲載されている詩にインスパイヤされて詩を創作し、それを音読して紹介するという活用方法もあるだろう。自分が創作した詩を学級の友達が音読してくれる。自己肯定感を育てるためにうってつけである。

実践のヒントその3 調べて翻作しよう



 
翻作とは、千葉大学名誉教授の首藤久義先生の提唱する言語教育の一つの手法である。
一言で言えば、原作をもとに新たな形を作ることである。大きく、原作をなぞって様々な手段で表現していくことと、原作を改変して新しい作品を作ることに分かれる。
 
1.詩を一斉音読する(何度か朝の会などで一斉音読しておく)
 
2.話者(作者)が例に挙げている「“やか”のつく言葉」の意味を一つ一つ確める
はなやか…派手で美しいさま。 
はれやか…①空が明るく晴れ渡っている ②心がすっきりとして明るいさま。
さわやか…気持ちが晴れやかですがすがしいさま。
おだやか…①静かなさま。安らか。平穏無事。
すこやか…病気をせず丈夫なこと
こまやか…心がこもっているさま。情けが厚いさま。
 
3.「やか」のつく言葉を探す
ほかにも「やか」のつく言葉はたくさんあります。どんな言葉がありますか?

知っている言葉を含めて、辞書などで調べて、発表する。意外とたくさんあることに気づく。ざっと挙げると
にぎやか あざやか あでやか かろやか きらびやか ささやか しとやか 
つつましやか なごやか ひめやか ひややか しなやか のびやか しめやか 
すみやか たおやか つややか まろやか…

 
4.「やか」のつく言葉にはどんな意味が多いかを考える
「やか」のつく言葉には、明るく前向きでプラスの気持ちが込められていることを話し合って確認する。「ひややか」が例外となろう。
 
5.自分の詩「すてきな言葉」を翻作する
20~22行目を他の「やか」のつく言葉に置き換える。自分で最大6つの言葉を選んで置き換えて、自分の詩「すてきな言葉」を翻作する。
 
6.発表し合い一斉音読する
自分の詩「すてきな言葉」を発表し、できればその言葉を選んだわけを言う。
全員でその子の詩「すてきな言葉」を一斉音読する。

実践のヒントその4 落語(小噺)の演じ方を知り演じよう

教育出版には落語の教材が掲載されている。広い意味で落語も音読であろう。ここでは落語と言う伝統文化に親しむために落語の演じ方を教え、子どもが一人一人演じるという活用方法を提案する。

1.落語の概要を知る
次のことを説明する。

○落語は、江戸時代に、そのかたちが定まった日本伝統の話芸であること。
○落語は、一人で座布団に座り、扇子と手拭を使う話芸であること。
○落語は、上手や下手に顔の向きを変えながら複数の登場人物を演じ分ける話芸であること。
○その多くは滑稽な噺であり、最後はオチという部分で噺を終える。

 
2.上下の切り方について知る
演じる側から見て右手側を下手、左手側を上手という。上手や下手に顔を向けて複数の登場人物を演じ分けることを「上下を切る」と呼ぶことを説明する。
「上下を切る」ためには、次のルールがあることを知る。
 

A家の中にいる人は上手にいるので下手を向く。外にいる人は家の方の上手を向く。
B身分の高い人や年長者、先生や師匠などは上手にいるので下手を向く。逆に身分の低い人や年の若い者、生徒や弟子などは下手にいるので上手を向く。

 
では、例えばお殿様が外にいて家来がなかにいるときはどうなるか。それはA(外か中か)が優先する。
「けちの小ばなし」に上のように次の印をつける。
 

○自分の右手側(下手)を向く
●自分の左手側(上手)を向く

  
3.稽古をする
稽古は次の4つの段階に分けられる
(1)音読稽古…テキストを両手に持って上下を切りながら音読する。上下を正しく、文章も正しく読めたら次の段階へ行く。
(2)演読稽古…テキストを机に置き、横目でテキストを見ながら上下を切り、仕草をつけて演じるように読む。テキストを見なくてもできたら次へ。
(3)試し稽古…テキストを見ないで上下を正しく、最後まで演じられるかどうか稽古をする。できたら、いよいよ仕上げ稽古に。
(4)仕上稽古…家族や友達、先生などに聴いてもらう。合格が出たら、人前で演じる。

「音読の森」には上記の通りもう一遍小噺があるが、インターネット上にもいろいろな小噺があるので、さらに演じたい子どもは、落語のレパートリーを広げていく。
 
<終わりに>
「音読の森」は、前述の通り、広く深い「文学の森」への入り口という役割を果たす。
同じテーマや形式の詩や同じ作者の他の作品に目を向け、文学の糧を豊かにしていくことをねらう。ただただ愚直に音読を重ねることが王道ではあるが、ここでは、さらに効果的に活用する方法を紹介した。他にも活用方法を編み出して下さることを願っている。

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教材 音読の森
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